労災になる?
業務が原因で発症した腰痛なので労災が適用されるものだと思っている介護士も多いのかもしれませんが、はたして腰痛は労災の対象になるのでしょうか。ここでは労災の定義についてふれながら腰痛が労災に該当するのかどうかを見ていきます。
労災に認定される条件
労災と認定されるには「業務起因性」と「業務遂行性」の2つの条件が必要となります。「業務起因性」とはケガや病気が仕事と因果関係があるかどうか、ということです。仕事が原因のケガや病気なら労災の対象となりますが、関係ない場合は個人のケガや病気になるため労災保険ではなく社会保険で対応することになります。
次に「業務遂行性」についてですが、これは労働契約に基づいて事業主の支配下で仕事をしていた際に発症したかどうか、ということです。休憩時間で仕事をしていなくても、施設内で行動しているときのケガや病気なら対象となります。「休憩中のケガや病気は仕事中に起こっているものではないため労災とは認められない」という人もいますが、施設内で起こっていることなのでしっかりと労災の対象となります。
腰痛は労災に該当する?
では、腰痛が労災の対象になるのかどうかを見ていきましょう。
腰痛になる原因として考えられるのが「仕事」「プライベート」「加齢」の3点といわれていますが、「どの原因で起こった腰痛なのか」はっきりと見分けがつくわけではないので、どう判断すればいいのか難しい、というのが正直なところです。そのため、厚生労働省では「業務上腰痛の認定基準等について(昭和51年10月16日基初第750号)」という通達を出し、その中で腰痛を「災害性の原因による腰痛」か「災害性の原因によらない腰痛」かに区分しています。
災害性の原因による腰痛とは、明確な理由がある腰痛のことです。たとえば、要介護者を車いすから移譲させようとした衝撃で腰を痛めたりぎっくり腰になったりと、業務との因果関係がはっきりとしている場合は業務上の腰痛として労災に該当します。ただし、ぎっくり腰は日常生活の動作でもなることがあるため、業務中に発症しても基本的に労災とは認められません。先述したように「腰への強い作用があった」とはっきりとわかる場合のみ、労災と認められます。
一方、災害性の原意によらない腰痛とは、はっきりとした原因がある腰痛ではなく日々の業務の積み重ねで引き起こす腰痛のことを指します。原因がはっきりとせず曖昧なため、労災認定されるためには「腰に過度の負担がかかる業務に3か月以上従事したことで引き起こす腰痛であること」「重いものを扱っていて腰に過度の負担がかかる業務を10年以上従事したことで引き起こす腰痛であること」の2つの条件をクリアしなければなりません。